神に選ばれなかった者達 前編

その日の夜。

俺は、夜蛾みらくと二人で過ごした。

夜蛾みらくは、ようやくこの悪夢の中で、話が出来る仲間が出来たのが嬉しいのか。

ここぞとばかりに、様々なことを聞いてきた。

まるで、『処刑場』の仲間と出会ったばかりの俺と同じように。

だから俺は、かつて自分がそうしてもらったように。

今の俺が知っていることを、全て話した。

この悪夢が、終わりなく続くであろうということも。

夜蛾みらくは、俺より遥かに淡々と、現実を受けているように見えた。

だが、口にしないだけで、心の中で思うことはあるだろう。

これからのことよりも、夜蛾みらくは、今、この場所に共に悪夢を見る仲間がいたことに、安堵しているようだった。

夜が明ける前、彼女は俺に聞いた。

「ねぇ…。君の言うことが本当なら…私、明日も、この悪夢を見ることになるんだよね?」

「そうだな。お前も…俺もだ」

「そっか…。…病院には行ったの?お医者さんに相談したり…」

「それはやった。でも、無駄だ」

夢の中のことはどうしようも出来ない。と言われ、精々睡眠薬を処方されただけだ、と説明した。

しかも、その睡眠薬を飲んでも、結局悪夢は変わらなかった。

眠っている時に見る夢が問題なのであって、寝付きが悪くて困ってる訳じゃないからな。

医者にも薬にも、どうすることも出来ないのだ。

「そうなんだ…。病院…行ったら何か変わるのかなって、ずっと考えてたんだけど…。…やっぱり駄目なんだ」

「…俺が行った病院がそうだったというだけで、別の病院に行けば、また診断結果が変わるかもしれないが」

「ううん…。良いよ、教えてくれてありがとう」

…そうか。

まぁ、下手に希望を抱いて…それが打ち砕かれた時の絶望は、耐え難いものがある。

医者でもないのに、余計な口出しはしない方が良いのかもしれない。

「ねぇ…明日もここに来てくれる?」

と、夜蛾みらくは聞いてきた。

ここに、とはつまり…この屋上のことだろう。

…一人になる為に逃げてきたのに、これじゃ意味がない…。

…はずなのだが。

「…分かった。来るよ」

俺がそう答えると、みらくはぱっと表情が明るくなった。

「良かった。それじゃ、待ってるからね」

「あぁ…」

何で頷いてしまったのか、自分でも分からなかった。

ただ、今はもう、新しい作戦なんて考えたくなかった。

何も考えず、ただ屋上で喋っていられるだけで良いなら、俺にとって悪いことはなかった。