神に選ばれなかった者達 前編

そりゃあもう、あちこち探し回った。

空き教室やら、ベランダやら、果ては部室棟まで。

隈なく探し回ったんだが、これがなかなか見つからない。

こんなに難航するとは思わなかった。

もういっそ、諦めて帰ろうかな、と思うこと6回。

廊下ですれ違う生徒を捕まえて、「迷子の机と椅子を見なかったか?」と聞きたい衝動に駆られたのが8回。

「この人探してます」のノリで、机と椅子探してます、と各階の掲示板にポスターを貼ろうか、と考えること14回。

校内を隈なく探し回った俺は、ついに、最後の場所に辿り着いた。

あと、探していないのはここだけだ。

そこは何処かというと、屋上。

…まさか、屋上に机を運んできて捨てるだろうか?

そもそも、屋上って鍵がかかっているのでは…。

普段、屋上なんて利用したことがないから、さっぱり分からない。

だが、もうここ以外探す場所がない。

ここになかったら、もう諦めて、明日からビニールシートを持ってこよう。

と、思いながら、階段を上がる。

屋上に繋がる扉には、『生徒の立ち入りを禁止する』との貼り紙が貼ってある。

そりゃそうだよな。

やっぱり、鍵がかかってるだろうと、駄目元でドアノブを捻ってみると。

意外なことに、鍵がかかっていなかった。

…無用心にも程があるな。

立ち入り禁止なのに、なんで鍵は開いてるんだ?

そっと扉を開けると、初めて見る屋上の景色が。

屋上に自由に入れるなんて、危ないんじゃないか…と思われるだろうが。

屋上には、俺の背丈より遥かに高い、頑丈な柵が取り付けられていた。

成程。これなら、飛び降りようと思っても不可能だな。

そして。

「あ…。…あった…」

俺の捜し物、俺の机と椅子が、雨晒しになって転がされていた。

こんなところにいたのか…。

ぐっしょりと雨に濡れた机と椅子を、しばらくじーっと眺めていると。

「おい!そこで何をしてる?」

「…?」

声をかけられて、振り向くと。

不機嫌な顔の男性教師が、こちらを睨んでいた。

「ここは立ち入り禁止だぞ!さっさと出ろ!」

「いや…。でも…机…」

俺の机がそこにあるんだが、と言おうとしたが。

全然聞いてもらえなかった。

「良いから、早く戻れ!もうすぐ下校時刻だぞ」

それは分かってるんだが。机が。

「ほら、早くしろ!ったく…何考えてるんだか…」

「…」

屋上に上がって、変なことを考えているとでも思われたのだろうか。

別にそういう訳じゃないのだが。

仕方なく、俺は折角見つけた机と椅子を、屋上に置き去りにし。

男性教師に背中を押されるようにして、屋上から、そして「さっさと帰れ」と、校舎から追い出された。

…仕方ないから、やっぱり明日はビニールシート持参だな。

それを教室の床に敷いて、さながらピクニック気分で授業を受けるとしよう。






…しかし。