神に選ばれなかった者達 前編

放課後、雨が降りしきる中。

俺は、渋々校舎の外に出て、ゴミステーションに向かった。

そこには掘りかけの落とし穴も、燃え尽きた調理実習室もなかった。

いつも通り、いつもと変わらない校舎の景色がそこにあった。

出来る限り、そちらの方は見ないように気をつけていたつもりだが。

「…っ…」

視界の隅に、ノイズが走った。

丁度、俺が昨日ゾンビに食い殺された場所だ。

頭を振って、思い出したくない景色を脳内から振り払った。

…。

以前は、ゴミステーションに机と椅子が捨ててあったものだが。

今回は、何処にも見当たらなかった。

…何処に行った?

わざわざ雨の中探しに来たのに、まさか見つからないとは思わなかった。

ゴミステーションをうろうろと、歩き回って探してみたのだが、やっぱり見つからない。

…成程。そう来たか。

今度は、また別の場所に捨てたらしい。

仕事が丁寧だな。…なんと言うか。

同じ場所には隠してやらないと…そういうことか。

ゾンビより賢いんじゃないか?

…さて、それはそれとして。

見つからない机と椅子を、探さなければならない。

何処に捨てたんだろうな…今度は…。

本人達を問い詰めれば、答えてくれるだろうか。

…錐で突き刺したら教えてくれないかな。

そう簡単には教えてくれないと思う。

多分、うろうろと探し回ってる俺を見て、にやにや笑ってるんじゃないだろうか。悪趣味だから。

雨の中探し回るのは面倒だし、床で授業を受けるのも慣れてきたし。

俺としては、このまま見つからなくても困らないのだが。

明日までに戻しておけ、って教師に言われたしな…。

…面倒だが、探さざるを得ないだろう。

ゴミステーションを探し回るのを諦め、俺は再び校舎の中に戻ることにした。