「行くぞ、のぞみ!」
「う、うん…!」
空音兄は、こんな時でも妹の手をぎゅっと掴み。
一緒に、一目散に走り出した。
「バラバラに逃げた方が良い。俺と萌音は向こうに行くから、ふぁにと響也は別方向に」
「分かった」
分散してバラバラに逃げれば、追いかけてくるゾンビを撹乱することが出来る。
李優と萌音ちゃんは、空音兄姉とは別方向に駆け出した。
ふぁにも、別の方向に駆け出そう…と、したのだが。
隣から、ドサッ、という音がした。
「えっ…?」
驚いて横を見ると、響也くんが。
呆然としたまま、その場に膝を折って座り込んでいた。
何処か怪我でもしたのか、と思ったが、そうじゃなかった。
その絶望した眼差しを見れば分かる。
作戦が失敗して、ついに心が折れたのだ。
思えばさっきから響也くんは、様子がおかしかった。
メンタルがもう、限界だったのだろう。
無理もない。
彼は、生贄になってからまだ日が浅い。
いきなりこんな悪夢に巻き込まれて、何度もゾンビに殺されて。
ふぁに達に最初に会った時、随分落ち着いていたように見えたが。
本来なら、もっと狼狽えて、もっと怯えているのが普通だ。
メンタル強いんだなーとか思ってたが、そういう訳じゃなかったんだ。
ただ、動揺を他人を見せないようにしていただけだ。
一生懸命虚勢を張って、気丈に振る舞ってきたけど。
相次ぐ作戦の失敗に、ついに、我慢の限界を迎えてしまったらしい。
この程度の作戦失敗、ふぁに達にとっては日常茶飯事だが。
響也くんにとっては、心が折れるほどの絶望だったのだろう。
気持ちは分かる。痛いほどよく分かる。
でも、今は。
よしよしって、慰めてやってる時間も、余裕もないのだ。
死にたくなければ逃げないと。戦わないと。
待ってくれないんだよ。残酷な現実は、君が覚悟を決めるまで。
「どうした、響也!?」
「響也くん、立って…!」
李優くんとふぁにが、響也くんに声をかけたが。
「…」
彼は答えなかった。そして、立ち上がることも出来なかった。
あぁ、くそ、畜生。
「助けられない。置いていく」
萌音ちゃんの判断は早く、そして残酷だった。
ゾンビ達はもう、すぐそこまで迫ってきている。
背負って逃げていれば、捕まるのは明白だった。
萌音ちゃんは即座に、響也くんを見捨てて逃げることを選択し、走り出した。
非情だけど、これが正しい判断だった。
そして、『処刑場』の暗黙のルールでもあった。
助けられる時は助ける。でも、助けられない時は見捨てる。
こんなことでいちいち良心を痛めいたら、この悪夢を生き延びることは出来なかった。
「う、うん…!」
空音兄は、こんな時でも妹の手をぎゅっと掴み。
一緒に、一目散に走り出した。
「バラバラに逃げた方が良い。俺と萌音は向こうに行くから、ふぁにと響也は別方向に」
「分かった」
分散してバラバラに逃げれば、追いかけてくるゾンビを撹乱することが出来る。
李優と萌音ちゃんは、空音兄姉とは別方向に駆け出した。
ふぁにも、別の方向に駆け出そう…と、したのだが。
隣から、ドサッ、という音がした。
「えっ…?」
驚いて横を見ると、響也くんが。
呆然としたまま、その場に膝を折って座り込んでいた。
何処か怪我でもしたのか、と思ったが、そうじゃなかった。
その絶望した眼差しを見れば分かる。
作戦が失敗して、ついに心が折れたのだ。
思えばさっきから響也くんは、様子がおかしかった。
メンタルがもう、限界だったのだろう。
無理もない。
彼は、生贄になってからまだ日が浅い。
いきなりこんな悪夢に巻き込まれて、何度もゾンビに殺されて。
ふぁに達に最初に会った時、随分落ち着いていたように見えたが。
本来なら、もっと狼狽えて、もっと怯えているのが普通だ。
メンタル強いんだなーとか思ってたが、そういう訳じゃなかったんだ。
ただ、動揺を他人を見せないようにしていただけだ。
一生懸命虚勢を張って、気丈に振る舞ってきたけど。
相次ぐ作戦の失敗に、ついに、我慢の限界を迎えてしまったらしい。
この程度の作戦失敗、ふぁに達にとっては日常茶飯事だが。
響也くんにとっては、心が折れるほどの絶望だったのだろう。
気持ちは分かる。痛いほどよく分かる。
でも、今は。
よしよしって、慰めてやってる時間も、余裕もないのだ。
死にたくなければ逃げないと。戦わないと。
待ってくれないんだよ。残酷な現実は、君が覚悟を決めるまで。
「どうした、響也!?」
「響也くん、立って…!」
李優くんとふぁにが、響也くんに声をかけたが。
「…」
彼は答えなかった。そして、立ち上がることも出来なかった。
あぁ、くそ、畜生。
「助けられない。置いていく」
萌音ちゃんの判断は早く、そして残酷だった。
ゾンビ達はもう、すぐそこまで迫ってきている。
背負って逃げていれば、捕まるのは明白だった。
萌音ちゃんは即座に、響也くんを見捨てて逃げることを選択し、走り出した。
非情だけど、これが正しい判断だった。
そして、『処刑場』の暗黙のルールでもあった。
助けられる時は助ける。でも、助けられない時は見捨てる。
こんなことでいちいち良心を痛めいたら、この悪夢を生き延びることは出来なかった。


