神に選ばれなかった者達 前編

さすが、頭の良い子は着眼点が違うな。

自分今、「お酒だったら、校長室に校長秘蔵のウィスキーを保存したりしてないかな」なんて考えてたぞ。

さすがにねーだろ。

でも、確かに…家庭科室なら。

「…どうなんだ?響也。知ってるか?」

李優くんが、響也くんに尋ねた。

「…それは…分からない。でも、行ってみる価値はあると思う」

…だな。

ビールやウィスキーはともかく、調理用のサラダ油や、料理酒くらいはあるのでは?

「サラダ油って、引火するのかな…」

と、不安を口にする空音妹。

「さぁ…。やってみないことには分からないが、少なくとも何もないところに火をつけるよりは、よく燃えるんじゃないか?」

「そうかな…」

「ま、ここ夢の中だからな。都合の良いことも悪いことも、何でも起きるさ」

現実でやったことと同じことを夢の中でやって、同じように行くとは限らないし。

その逆もまた然り。
 
もしかしたら、夢の中だと、サラダ油がガソリン並みに燃える…なんてことも、あるかもしれないじゃないか。

これまで幾度も、夢の中でバケモノ退治を行ってきた、その経験があるから言えることだ。
 
「そうだ。確か家庭科室って、ゴミ捨て場のすぐ近くじゃなかったか?」

と、李優くん。

…そういえば。

「あぁ、そうだ。ゴミステーションの向かい側だな」

この学校の地理に詳しい響也くんが頷く。

今ゾンビ達は、ゴミ捨て場の近くにたむろしている。

ゴミ捨て場からほど近い家庭科室なら、ゾンビを誘き寄せるのは容易いってことだ。

…条件が揃っちまったな。色々と。

「油や酒が手に入る…。ガスコンロもあるから、火をつけるのは簡単」

「おまけに、ゴミ捨て場の近くなら、ゾンビを誘き寄せるのも容易だな」

「…じゃ、やるか」

もうこうなったら、やらない理由はないぞ。

例え失敗したとしても、経験が得られるなら良し。

「…よし。皆、早速家庭科室に移動しよう。作戦会議だ」

落とし穴作戦改め。

校舎放火作戦が、ここに始動。

…なかなか危険な字面だが、ここは夢の中だから良し。