神に選ばれなかった者達 前編

「成程…。火か。それは効果的かもな…」

「やってみる価値はありそうだな」

「うん」

良い情報をありがとう、空音妹。

何でも試せることは、やってみるべきだな。

火攻め、水攻めは敵陣制圧の基本、ってね。

「…でも、どうやって燃やすの?」

こてん、と首を傾げる萌音ちゃん。

…確かに。

「…松明に火をつけて追いかけ回す、とか?」

「…それ、ただゾンビが逃げるだけで、倒すことは出来ないんじゃないか?」 

火を怖がるってことは、火を見たら近寄ってこないだろう。

こっちには、ゾンビを一網打尽に出来る武器はないのだ。

萌音ちゃんの今回の武器は包丁だし、李優くんの羽根は便利だけど、武器には使えないし。

自分の武器は弓矢で、一体ずつ倒すのは得意だけど、一網打尽には出来ない。

空音兄妹も同様。

新人の響也くんだって、ちっちゃい錐一本だし…。

だからこそ、古典的な落とし穴に頼ろうとした訳で。

ゾンビの方から近寄って来てくれなきゃ倒せない。

「何処かに罠を敷いて、そこに誘き寄せて…一気に燃やす、とか?」

「言うは易しだが、実行するのは大変だぞ」

誘き寄せる…ところまでは、可能かもしれない。

実際、ゴミ捨て場付近にゾンビを集めることに成功している訳だしな。

それにあいつら、人の姿を見ると寄ってくるみたいだし。

わざと自分らが姿を見せて、罠の場所に誘導すれば。

校舎内にいるゾンビの皆さんを、一箇所に集めることは出来るだろう。

時間はかかりそうだが、でも不可能ではない。

問題は、何処に、どうやって罠を張るか、だ。

「…火事を起こす、しかないんじゃないか?」

さらっと口にする李優くん。

校舎に放火とは。大胆だな。

「こ…校舎を燃やしてしまうのか?」

響也くんが、驚いたようにこちらを見た。

「何か不都合なことがあるか?俺達は外に出ておけば、火事に巻き込まれることは…」

「いや…でも…。火事を起こすのは不味いんじゃ…」

何が不味いんだ、と思ったけど。

そういやこの校舎は、響也くんが昼間に通っている学校の校舎なんだっけ。

そりゃ、燃やすのに抵抗があるのは当然だ。

「大丈夫だ、響也くん。ここは夢の中だから。例え校舎を爆破したって、現実には何の影響もないよ」

「そ、そうか…。それなら…」

優しいヤツだな、君は。

自分だったら、校舎を燃やすことに躊躇いなんてないけどな。

いっぺん燃えた方が良いんだよ。あんな場所は。

「燃やすにしても、一気に燃やさないと、ゾンビを一網打尽にするのは難しいだろうな」

確かに。一気にドカン…じゃないと、ゾンビが巻き込まれてくれないな。

しかし、どうやって一気にドカンするんだ?

ダイナマイトでもあれば、話は早かったんだけどな。