神に選ばれなかった者達 前編

ゾンビ一斉落とし穴作戦が頓挫したふぁに達、『処刑場』の一行は。

今夜もまた、頼れる新人、響也くんの案内で部室棟に隠れていた。

そこに、偵察に行っていた李優くんが、羽根を羽ばたかせながら帰ってきた。

この人ほんと便利だよな。

「お帰り。どうだった?」

「駄目だ」

李優くんは、お手上げとばかりに両手を上げ、首を横に振った。

…やっぱそうか。

李優くんには、昨日まで落とし穴を建設していたゴミ捨て場付近の偵察に行ってもらっていた。

昨日まで安全地帯であったはずのゴミ捨て場付近だが、そこは既に、ゾンビの溜まり場に様変わりしているようだ。

どうやらあのゾンビ共、意外と賢いらしいな。

ふぁに達がゴミ捨て場に集まってると気づいて、追いかけてくるとは。

ゾンビにそれだけの知能があるって、初めて知ったよ。

ふぁにより賢いんじゃね?

「そうか…。ということは、新たにこの部室棟を拠点にしてしまうと、今度はここも…」

「…だな。一応、人間を探して追いかけてくるくらいの知能はあるらしい」

「…ごめんなさい」

空音兄妹の妹の方が、ふぁに達に謝ってきた。

相変わらず、落とし穴作戦が瓦解したのは自分のせいと思っているらしい。

いい加減立ち直って欲しいもんだ。

あんまり落ち込まれると、こっちもかける言葉に困るじゃないか。

「良いよ。お互い様なんだから。それより新しい作戦を考え…」

「あ…うん、その作戦なんだけど…。私、一つ考えてきたんです」

え?

空音妹の言葉に、一同が振り向いた。

「…どういうことだ?作戦って…」

「はい…。今日、実は学校の図書室で…ゾンビの生態について調べてきたんです」

マジ?図書室で調べられるものなの?

「…そんな本あるの?ゾンビの生態って…」

ゾンビ図鑑とかあるんだろうか。知らんけど。

何処に需要があんの?

「『猿でも分かる!ゾンビの倒し方』っていう本なんですけど…」

「…世界って広いな…」

そんな本が存在していたこと。そして、そんな本を空音妹が見つけられたこと。

2つの奇跡が揃ったな。

「で、その本、本当に役に立つのか?」

「…分かりません。それは…その、やってみないと…」

「あぁ…まぁ、そうだな」

何事も挑戦、そして失敗、から経験を積み重ねていくものだ。

バケモノ退治は、いつだってそう。

失敗したら、また別のアプローチを試すだけのことだ。

「でも…その本によると、ゾンビは火が苦手なんだそうです」

とのこと。

「火…。火か…」

…そういや、聞いたことがあるようなないような。

吸血鬼だって、太陽が苦手だって言うもんな。

それと同じように、ゾンビは火が苦手だってことか。

迷信じゃなければ良いんだけどな。