神に選ばれなかった者達 前編

家族として扱われなくなったほたるは、家族と一緒に食事を摂ることも許されなくなった。

食事作りの手伝いはさせられるし、食事後の片付けも全部やらされるのに。

肝心の食事の時間は、ほたるだけ完全に除外されていた。

同じ食卓につくことは許されず。

ほたるの分の食事は、いつも大きめのお皿に、余ったご飯と余った味噌汁をかけた、所謂ねこまんま。

に、余ったおかずがあれば、ついでにトッピングされていた。

人間じゃなくて、ペットの犬みたいな扱いだな。

ペットの犬の方が、まだ扱いが良いかもしれない。

可愛がってもらえるもんな。犬だったら。

まったく可愛がられないどころか、ひたすら痛めつけられる始末。

お風呂は当然一番最後で、家事も勉強もやっても、一日のうちに遊ぶ時間は一分とてない。

やるべきことが全部終わると、早々に寝かされる。

しかも、寝ている時でも心の休まる瞬間はない。

学校でのいじめは、時間が経つごとに、少しずつ慣れることも出来た。

心を閉ざしてしまえば、傷口を塞ぐことも出来たからだ。

だけど夜の間だけは。あの真っ暗闇には、到底慣れることは出来なかった。

と、言うのもほたるは、事件が発覚したその日の夜から。

一晩中、一階にある広い物置の中で寝かされることになってしまったのだ。






…初めてそこで寝ることになったその日、床で伸びているほたるのもとに、鬼のような形相のパパがやって来た。

思わずびくっとして、また殴られるんじゃないかと怯えたが。

そうじゃなかった。

パパは無言で、ほたるの襟首を掴んだ。

そのまま、重い荷物でも引き摺るように、ずるずると引っ張って連れて行かれた。

階段を引き摺り降ろされ、辿り着いたのは一階の押し入れ。

押し入れの入り口には、見たことのない南京錠がつけられていた。

「な、何…?」

ほたるは怯えて尋ねたが、パパは何も答えなかった。

そのまま、押し入れにほたるを投げ込んだ。

比喩じゃない。本当に投げ入れた。

そして、申し訳程度に薄っぺらい毛布を一枚、放り投げてきた。

それ以外、寝具は何もない。

「野放しにしておくと、夜中に何をするか分からないからな」

と、パパは冷たく言った。

「今夜から、毎晩寝る時はここに閉じ込めておくことにした」

「…!」

…まさか。

まさか、この狭い空間に一晩中、自分を閉じ込めておくつもりなのか?

愕然としていると、パパは無情に押し入れの扉を閉めた。

「ま、まっ…!」

待って、と言う暇もなく。

ガチャッ、と鍵を閉める音が、扉の向こうから聞こえた。

こうしてほたるは、真っ暗な押し入れの中に閉じ込められてしまったのである。

ほたる、絶賛大ピンチ。

まるで、棺桶に閉じ込められたような気分だった。