神に選ばれなかった者達 前編

学校に居場所をなくしたほたるだが。

同時に、家庭にも居場所をなくしていた。

当然である。パパとママは、もうほたるの親をやめているも同然なのだから。

パパとママは、ほたるを守ってくれなかった。もう庇ってもくれなかった。

それどころか二人は、まるで刑務所の監視員のように、ほたるの一挙一動を見張った。

二度とほたるが悪さをしないように、徹底的に管理しなければならなかった。

宣言通り、ほたるは学校を休むことは許されなかった。

どんなにいじめが酷くなっても、一日たりとも、学校を休むことは出来ない。

保健室の立ち入りを禁止されていたので、保健室に逃げることも出来ない。

これではまるで、いじめられる為に学校に行っているようなものだった。

学校が終わって家に帰っても、ほたるには心の休まる時間はなかった。

ほたるを好きにさせていると、また何をするか分からない。

そこでパパとママは、ほたるを徹底的に束縛した。

門限が厳格に決められ、その時間に一分でも遅れると、容赦なく打擲された。

門限と言ったって、学校が終わるなりすぐに走って帰らなきゃ間に合わない。

放課後にゆっくりするような時間もなく、授業が終わるとすぐに、ほたるは脱兎のごとく帰宅しなければならなかった。

しかし、いつも門限に間に合う訳では無い。

授業が長引いたとか。帰りのホームルームが長引いたとかで、時折門限に遅れることもあった。

だが、パパもママも、そんな事情など聞いてくれなかった。

門限に遅れると、ほたるが何処かで悪さをしていると思うのか。

何処で何をしていたのか白状しろと、何度もぶん殴られた。

正直に「授業が長引いただけ」と告白しても、ほたるが悪事を働いていると思い込んでいる両親は、全然信じてくれなかった。

ますます何度も叩かれて、ほたるの頭は常に何個もたんこぶが出来ていた。

特に痛いのは、やはりパパだった。

大の男に殴られれば、まだ小学生のほたるなんて一溜まりもない。

吹っ飛ぶほど強く殴られて、痛みのあまり眠れない夜を過ごすこともしょっちゅうだった。

パパの殴り方は、いつだって容赦がなかった。

だけど、ママなら優しいと思ったら、大きな間違いだった。

ママは確かに、パパほど強烈な一撃は飛んでこない。

代わりに、ママはほたるの髪の毛を掴み、壁や柱に思いっきりぶつける、という特技があった。

壁に頭を思いっきりぶつけられるんだから、これは痛い。

下手すると、パパに拳骨食らうより痛い。

目の前に火花が散る。マジで。

殴られなかったとしても、両親からの扱いは悪かった。

ほたるに暇を与えると、いつ、またどんな悪さをするか分からないということで。

家にいる時のほたるは、あらゆる家事をやることを言いつけられた。

皿洗いから、庭の草むしりから、風呂掃除や玄関掃除。

雑巾で、家の階段を一段ずつ拭く。家中の窓を全部拭く。洗濯物を全部干したり、片付けたり。など。

ほたるの家は大家族だったし、ママはまだ末っ子の妹ちゃんの世話で忙しかったから、やることはいくらでもあった。

万が一やるべき家事が全て終わってしまったとしても、休む暇はない。

そういう時は、ひたすら勉強をさせられた。

ちょっとでも休んだり手を止めたりすれば、また容赦なく殴られる。

これじゃ、まるで奴隷のような扱いだった。