神に選ばれなかった者達 前編

一体、どれほど殴られたのか。

気がつくと、ほたるは暗い部屋の中に置き去りにされていた。

何とか起き上がろうとしたが、身体中が軋むように痛かった。

殴られている時は、痛みよりも衝撃の方が強烈だったが。

時間が経ってから、思い出したように、全身が凄まじい痛みに襲われた。

げほげほと、その場に血反吐を吐いた。

吐く度に、胸や腹が酷く傷んだ。

床の上でしばらく、芋虫みたいに身体をくねらせ。

何とか腕をついて、のろのろと起き上がったが。

視界がぼんやりとしていて、目の前がよく見えなかった。

目も唇も頬も腫れ上がってボコボコで、人相まで変わってしまったようだった。

これが報いだった。

3ヶ月に渡って、人様の金を湯水のように使った報い。

ぶっちゃけ、何万円も消し飛ばして、この程度で済むなら軽いもんだと思う。

後で知ったことだが、この間にパパとママは、二人で祖父母宅に行き。

頭を下げて、ほたるが盗んでしまったお金を弁償すると申し出ていた。

祖父母も、ひいおばあさんのへそくりが盗まれているなんて、その時初めて知ったらしく、青天の霹靂だったそうだ。

だが、ほたるを問い質しても、総額いくら盗んだのかは判然としなかった。

ほたる自身、最初の五万円以外は、もう数えてもいなかった。

ほたるは多分、この3ヶ月の間に、一生分のお小遣いを使い果たしたんじゃなかろうか。

そう思うと、凄い金額だよな。

子供が使って良い額じゃない。

結局、ひいおばあさんはボケてて、盗まれていることにも気づいてないし、元々いくらあったのかも分からないし。

お金の管理が杜撰だったこちらにも非はあると言って、祖父母はお金の返金は要求しなかった。

ただ、二度とほたるを家に上げるつもりはない、ときっぱり言った。

事実上の縁切りである。

更に、親戚等の集まりにも、ほたるは連れてこないで欲しいと言い、パパとママも了承した。

当然の報いだった。

子供だから逮捕されてないってだけで、普通に窃盗だからな。

しかも何万円も。これもう事件だよ。

パパとママも、お金の管理が甘かったことを猛省した。

そして同時に、ほたるという問題児を、これまで放置するばかりで、ろくに躾けなかったことも激しく悔いた。

正直、パパもママも、ほたるのことはもう顔も見たくなかった。

捨てたかった。家から追い出して、一生会いたくなかった。

でも、そういう訳にはいかなかった。

ほたるの親はこの二人なのだから、保護者としての責任を果たさなければならなかった。