神に選ばれなかった者達 前編

そりゃもう、めちゃくちゃ怒られたさ。

怒られたと言うか、ボッコボコにぶん殴られたと言うか…。

一体何処から、クラスメイト達にゲーム機を買うお金が出てきたのか。

金の出処を言え、とほたるは両親に詰め寄られた。

ほたるのママとパパは、これまで見たこともない形相だった。

特にパパ。

普段は優しく、子供達を叱ることはほとんどなかった。

ママが子供達を叱っているのを見ても、「まぁまぁ」と宥めるような人だった。

「パパは甘いんだから」と呆れられるのが、いつものほたるの家の、お決まりの流れだった。

しかし、今日のパパは、まるで別人だった。

その姿はまるで、地獄の獄吏。

普段怒らない人が怒ると怖いと言うが、あれは本当だな。

野次馬感覚で横から見ていた兄弟達が、思わず怯え、竦むほどに。

パパってこんなに怒るんだ、って軽くトラウマになるくらい。

パパはぴしゃりと扉を閉め、他の兄弟達を追い払った。

そして、怯えるほたるの胸ぐらを掴むなり、容赦なくぶん殴った。

口の中が切れて、血の味が広がった。

痛いと言うより、凄まじい衝撃が爆発したような感覚だった。

そんな風に殴られたことなんて一度もなかったほたるは、目から火花が散ったが。

続けざまに2発、3発とぶん殴られ、その凄まじい衝撃に、息も出来ずに悶絶した。

それは、親が子を躾ける時の殴り方ではなかった。

ただただ、憎しみを晴らす為の暴力だった。

大の男が子供を本気で殴るのだから、そりゃそうもなる。

いっそその場で気を失ってしまいたかったが、そうは行かなかった。

思わず意識が飛びかけたところを、腹に強烈な一撃を見舞われ、その場に反吐を吐いた。

髪の毛を乱暴に掴まれて、無理矢理顔を向けられた。

パパの顔は、怒りと憎しみに染まっていた。

見たこともない形相に、怯えて言葉が出なかった。

だがパパは、ほたるが金の出処を吐くまで、容赦のない強烈な往復ビンタを繰り返した。

堪らず、ほたるは白状した。

全ての悪事が、ここに明かされた訳だ。

書斎の押し入れの引き出しに入れていたお金のことを白状すると、パパはすぐさま、件の書斎に向かった。

引き出しを開けてみると、そこにあったはずの札束が、ごっそりと減っていた。

その時になって初めて、パパはここのお金が盗まれていることに気づいたのだ。

それも、また間抜けな話だと思うが。

パパにしてみれば、家族の中に泥棒がいるなんて予想もしていなかったのだ。無理もない。

それに、曾祖母のへそくりに手を付けていたことも、白状させられた。

まんまとお金を盗まれていた自分への怒り、そして、お金を盗んでおきながら平然としていた、ほたるへの怒り。

学校にも、クラスメイトの保護者達にも、恥を晒されたことへの怒り。

自分の家のみならず、祖父母や曾祖母まで巻き込んで迷惑をかけたことへの怒り。

信用が裏切られたことに対する怒り。

全ての怒りがパパを突き動かし、死ぬんじゃないかってくらい、ほたるをぶん殴った。

これまでほたるがしてきたことを思えば、当然の報いだった。