神に選ばれなかった者達 前編

普通に考えれば、こんな無茶なことは長く続かない。

押し入れの引き出しの札束がゼロになったら、その時点で終わりなはずだ。

しかしその頃のほたるは、別の資金源を見つけていた。

というのも、自宅ではなく、自宅の近所にある祖父母の家。

祖父母の家では、認知症の曾祖母が一緒に住んでいた。

で、その曾祖母を、祖父母が介護していた。

その祖父母の家の、曾祖母…ほたるのひいおばあさんの部屋にある、タンスの中に。

そこに、ひいおばあさんのへそくりが、封筒に入れてあるのを見つけたのだ。

この発見は、ほたるにとって、棚から降ってきた2個目のぼた餅だった。
 
認知症のひいおばあさんは、ほたるが多少へそくりを掠め取っても、全然気づかなかった。

それに仮に気づいて、「お金を盗まれた」と言っても。

高齢者の認知症にありがちな、物盗られ妄想と誤解され、まともに相手はされない。

これによってほたるは、新たな資金源を手にしたのだ。

これでもう、怯えながら深夜に書斎に忍び込む必要はない。
 
祖母の家に遊びに行く振りをして、簡単にお金を手に入れられる。

これにやり、クラスメイトはますます調子に乗って、ほたるに欲しい物をせびった。

おだてられて気を良くしたほたるは、いくらでも、何でも買ってやった。

更に行為はエスカレートし、クラスメイト達は、ほたるに「今月のお小遣いがなくなったから、来月までお金を貸して欲しい」と言った。

無論、担保も借用書もない、口約束の貸し借りである。

しかし、ほたるは気前良く貸してやった。

一応、返す時は何割か増しで返すように言ったものの。

それも口約束で、しかも、来月そのお金を返せなかったとしても、その時の気分次第で「良いよ良いよ、チャラにしてあげるよ」と、借金帳消しにしてあげていた。

なんともズボラなほたる銀行である。

しかしこの銀行は大繁盛。

クラスメイト達は便利で気軽、しかも経営管理が杜撰過ぎるほたる銀行を、大いに利用した。

この頃になるともう、倫理観は空の彼方に吹き飛んでるな。