神に選ばれなかった者達 前編

この後事態がどうなったか、大体お分かりのことだろう。

次の日からほたるは、その男の子二人だけではなく。

クラスメイトに手当たり次第に声をかけ、お菓子やジュースを奢ってあげるようになった。

何人かのクラスメイトは、突然異常なほど羽振りが良くなったほたるのことを奇妙に思ったのか、遠慮したものの。

大半のクラスメイトは、素直に喜んで、あれこれと奢ってもらった。

彼らは皆、ほたるに「ありがとう」と言った。感謝されたのだ。

他人に感謝されるなんて、初めての経験だった。

ほどなくして、クラスメイトは普段から、ほたるをちやほやしてくれるようになった。まるで王様扱いだった。

成績も悪く、スポーツも出来ないほたるは、いつだってみそっかす扱いだったのに。

突然、皆の人気者に成り上がったのだ。

お金の力って恐ろしい。

自尊心が満たされた。自分が何か、特別なものになったような気がした。

それなのに、欲望は満たされれば満たされるほど、際限なく膨らんでいく。

段々と気が大きくなっていった。もっともっと、皆に好かれたかった。ちやほやされたかった。

次第に、一度に使う金額が大きくなっていった。

お菓子だけじゃなくて、今度は文房具や、漫画、カードなどを買ってやるようになった。

クラスメイトにしてみれば、ほたるは良いカモだったに違いない。

ちょっとちやほやして、煽てて、「○○を買って」と頼めば、何でもホイホイ買ってくれるのだから。

クラスメイト達は、本心からほたるのことを好いていたのではない。

ただ、便利な財布だと思っていただけだ。

それなのに、ほたるはそんなことにさえ気づかなかった。

生まれて初めてクラスの人気者になれたことが、嬉しくて堪らなかったのだ。

しかし、段々と問題が起きた。

ランドセルの前ポケットに入れていたお金が、少しずつなくなっていったのだ。

お金なんだから、使えば減るのは当たり前なんだが。

無限に思えた5枚の一万円札だが、クラスメイト達にまで奢って豪遊すれば、遠からずなくなる。

焦り始めるほたる。

クラスメイト達は、ほたるに期待していた。

もっともっと、って。あれもこれも、って。

人の欲望って恐ろしいもんだな。

しかし何より恐ろしかったのは、ほたる自身だった。

お金が尽きたら、その時点でクラスメイト達との縁も切れるんじゃないかって。

金の切れ目が縁の切れ目、って奴だ。

ようやくふぁに以外の友達…だと言える人が出来たのに。

お金がなくなった瞬間、友達から見離されるのが怖かった。

何としても、ほたるはクラスメイトの期待に応えなければならなかった。

何としても、大富豪のままでなければならなかった。

ならば、どうするか。

更に、罪を重ねるしかなかった。