神に選ばれなかった者達 前編

とうとう、踏み込んではいけない領域に突入した瞬間だった。

突然現れたほたるに、驚きを隠せないクラスメイト達。

「え…。お前…ほたる…?」

「うん、そう…」

ほたるは、もじもじと答えた。

クラスメイトとはいえ、陽キャの二人と話したことなんて、ほとんどなかった。

だから、緊張していたのである。

「どういう意味だ?買ってあげようか、って…」

「あの…それは…」

まさか、親からパクったお金があるので、いくらでも買える。とも言えず。

「僕、今たくさんお金を持ってるから…。欲しい物があったら、何でも買ってあげるよ」

非常に怪しい誘いである、と言わざるを得ない。

これが中学生か高校生にもなれば、「なんか怪しいな」と思って、お断りするのかもしれないが。

所詮は小学校三年生。人を疑うということを知らなかった。

「え、ほんとに?良いのか?」

「うん…良いよ。何個買っても良いよ」

何せこちらには、万札があるのだ。

ウエハースチョコくらい、駄菓子屋の在庫を買い占めてもあまりある。

「やった、さんきゅー!お前良い奴だな」

「ありがとうな!」

「う、うん…」

クラスメイトに満面の笑顔を向けられた、その時の喜び。

それは、ほたるがこれまで感じたことがないほどの快感だった。

分かるだろうか。この時の喜び。

誰かが自分に、関心を向けてくれた。

家族でさえ自分を煙たがって、これまでふぁに以外、誰にも存在を認めてもらえなかったのに。

この時ほたるは、自分がお金を出すことによって、自分に「頼られてる」、「認めてもらってる」と思えたのだ。

自尊心が育ってないと、こういうことになるんだなぁって。

だが、これは決してほたるが認められた訳じゃない。

金の力が認められただけだ。

それなのに、ほたるは勘違いしてしまったのだ。

手っ取り早く、自分という存在を認めてくれる方法。

そして一度その快感を知ってしまうと、もう戻ることは出来なかった。

そりゃそうだよな。

大の大人でも、キャバクラで豪遊して、女の子にちやほやされる為に金をばら撒くのだから。

小学生のほたるにとって「それ」は、皆のはみ出し者だった自分が、逆に皆の人気者になれる、唯一の方法だったのだ。