神に選ばれなかった者達 前編

それでも始めのうちは、大した嫌がらせではなかった。

ちょっと無視をされるとか、影でひそひそ悪口を言うとか、そんな可愛らしい程度。

しかし、大した嫌がらせではなかったが故に、放置していたのが仇になった。

何をしても俺がスルーしているのが、余計雨野リリカの逆鱗に触れたらしく。

段々と嫌がらせはエスカレートして、現在は雨野リリカのみならず。

クラスメイト全体から、「萩原響也はいじめても良いもの」と認定されてしまった。

これは失策だった。

お陰で、今に至っても俺は、クラスのはみ出し者扱いである。

まぁ、でも、それも仕方のないことだ。

雨野リリカとの諍いがなかったとしても、俺には眞沙のように、クラスの人気者になれるはずもない。

所詮俺は、花一匁の最後の一人。

誰にも選ばれない、誰にも必要とされない人間なのだから。

それに、どうせ彼女達とは、高校3年間の付き合いだ。

三年経てば卒業して、離れ離れになるんだし。それまで我慢すれば良い。

我慢出来ないってことはないはずだ。それまでの辛抱なら。

別に、永遠に続く苦しみという訳ではないのだから。

自分にそう言い聞かせて、毎日を過ごしていた。






この時の俺には、分かっていなかった。

終わりのない苦しみ、永遠に続く苦痛というものが、どういうものなのかを。

そして、それがもうすぐ自分の身に訪れるということも。