神に選ばれなかった者達 前編

ママもパパも、優秀なお兄ちゃんとお姉ちゃんを見ているから。

何でほたるだけこんなに馬鹿なのかと、呆れていたものだ。

同じ学校で、同じ授業を受けて、同じ宿題をして、同じように育ててるはずなのに。

兄弟達は皆頭が良いのに、何でほたるだけ、こんなに馬鹿なのか。

馬鹿な上に、ほたるは運動音痴だった。

走るのも遅いし、プールに行っても泳げないし。

球技は特に下手くそで、ドッジボールやサッカーをする時は、どのチームもほたるを押し付け合っていた。

おまけに、弟と違って、芸術的なセンスもない。

可哀想なもんだ。

こればっかりは、ほたるが悪い訳じゃない。

生まれ持った才能の違い、というものだ。

同じ親から生まれたはずなのに、何でこんなに違うのか。

ママもパパも兄弟達も、親戚中の人々も、そう言ったものだ。

もしかして、生まれた時、産院がほたるを別の赤ん坊と取り違えたんじゃないか?って。

冗談混じりに、そんな風に言う人もいた。

その度に、ほたるは不満を爆発させたものだ。

ほたるがキレると、「冗談だよ、冗談」と笑ったが。

冗談じゃ済まされないよなぁ?相当酷いこと言ってるよ。

それなのに、ほたるの周りにいる人は。

才能の無さを揶揄されたことで怒っているほたるを、「冗談の分からないヤツ」認定して、馬鹿にしていた。

お兄ちゃんもお姉ちゃんも、ほたるを庇ってはくれなかった。

むしろ、親の見ていないところで、「お前だけ、橋の下から拾ってきた子なんじゃないの?」と笑った。

幼い頃、ほたるに悪戯ばかりされた仕返しのつもりだったのだろうか。

冗談だとしても、ほたるは傷ついた。

何でそんなことを言うのか。

自分に褒められるような才能がないことを、一番気にしているのはほたるなのに。

親の期待に応えられないことに、一番傷ついているのはほたるなのに。

お兄ちゃんとお姉ちゃんと弟が、百点満点のテストを、誇らしげにママとパパに見せているのに。

自分一人だけ、50点にも満たない、ペケ印だらけのテストを、おずおずと両親に見せる度。

ママもパパも呆れ、「もっと頑張りなさい」とか、「何であなただけこんなに馬鹿なのかしら」とか。

地味だけど傷つく嫌味を、ちくちくと言われ。

その横で、自分を小馬鹿にして笑う兄弟達の顔を見る。

何でそんなことを言うのか、と不満を爆発させようものなら。

「ならお前も、100点取れば良いじゃん」と。

まるで、気軽にお使いに行くみたいな感覚で言われる。

それが出来たら苦労しねーよ、って感じ。

ふぁには、別にテストの点数なんてどうでも良いと思う。

良いじゃん、別に。0点じゃないんだろ?

テストの点数なんかより大切なことが、この世にはたくさんある。

しかし、なまじ兄弟達のポテンシャルが高いせいで。

求められる基準もまた、高くなってしまっていたんだろうね。

…だからって、テストの点数を扱き下ろすのはどうかと思うぞ。

元々の兄弟仲の悪さが、ここに来て牙を剥いている。