当時、自分がそれに対してどのような反応をしたのか、今となっては定かではないが。
多分、ぼんやりとして、あんまり真面目に聞いていなかったような気がする。
何言ってるんだろう、と彼女の言いたいことの意図を計りかねていた。
返事に困った俺は、こう尋ね返した。
「…何で?」
「え、何でって…。それは…好きだからだよ」
と、雨野リリカは答えた。
はぁ。
好き…。…好きって、どういう感情なんだ?
そもそも、俺達は先月高校に入学して、同じクラスになってまだ一月しか経っていないのに。
こんな短い時間で、何故俺のことが好きだと断定出来るのか。
…もう少し、よく考えた方が良いのでは?
結論を出すのが早過ぎるのではないか。
「好き…って、何処が好きなんだ…?」
純粋に疑問だった。
自慢ではないが、自分に好きになる要素があるとは思えなかった。
「それは…顔、とか…」
「…顔…」
「クラスで一番イケメンだし…。それに、頭も良いし」
「…頭…」
…つまり、首から上ってことか?
「入学試験、一位で突破したんでしょ?」
「…あぁ…。それは、まぁ…」
「そんな頭の良い人が彼氏になってくれたら、なんかかっこ良いじゃない?だから、私と付き合って」
…なんか格好良いから。
それが、交際を申し込んだ動機なのか。
いまいちピンと来ないと言うか…。
…首から上が好きだと言われても、俺としては全然嬉しくない。
「ね、良いでしょ?」
そして、何故そんなに自信満々なのか。
まるで、自分が交際を申し込んだら、承諾するのが当然と言わんばかり。
それは思い上がりではないのか。
「悪いが、断る」
「えっ」
案の定、断られることなんてまったく予想していなかったらしく。
俺が拒絶すると、雨野リリカはきょとんとしていた。
俺は雨野リリカのことなんて、当時はまったく知らなかった。
何なら、あの時はまだ、雨野リリカというフルネームさえ覚えていなかった。
ただのクラスメイトA、という扱いだった。
そんな人に、首から上が好きだから付き合ってくれと頼まれても、引き受けることは出来なかった。
それに、例え雨野リリカのことをよく知っていたとしても、このような話は断っただろう。
「他を当たってくれ」
頭が良くて顔が良い男が好きなら、俺である必要はない。
他にいくらでも、変わりはいるはずだ。
俺には分からない。
誰かを好きになるとか、誰かに好かれるとか、そういうことは分からない。
多分一生分からないと思う。
「話はそれだけか?なら、もう失礼する」
「え、ちょ、まっ…」
雨野リリカの制止を振り切って、俺はくるりと踵を返して立ち去った。
…雨野リリカからの嫌がらせが始まったのは、この時からである。
多分、ぼんやりとして、あんまり真面目に聞いていなかったような気がする。
何言ってるんだろう、と彼女の言いたいことの意図を計りかねていた。
返事に困った俺は、こう尋ね返した。
「…何で?」
「え、何でって…。それは…好きだからだよ」
と、雨野リリカは答えた。
はぁ。
好き…。…好きって、どういう感情なんだ?
そもそも、俺達は先月高校に入学して、同じクラスになってまだ一月しか経っていないのに。
こんな短い時間で、何故俺のことが好きだと断定出来るのか。
…もう少し、よく考えた方が良いのでは?
結論を出すのが早過ぎるのではないか。
「好き…って、何処が好きなんだ…?」
純粋に疑問だった。
自慢ではないが、自分に好きになる要素があるとは思えなかった。
「それは…顔、とか…」
「…顔…」
「クラスで一番イケメンだし…。それに、頭も良いし」
「…頭…」
…つまり、首から上ってことか?
「入学試験、一位で突破したんでしょ?」
「…あぁ…。それは、まぁ…」
「そんな頭の良い人が彼氏になってくれたら、なんかかっこ良いじゃない?だから、私と付き合って」
…なんか格好良いから。
それが、交際を申し込んだ動機なのか。
いまいちピンと来ないと言うか…。
…首から上が好きだと言われても、俺としては全然嬉しくない。
「ね、良いでしょ?」
そして、何故そんなに自信満々なのか。
まるで、自分が交際を申し込んだら、承諾するのが当然と言わんばかり。
それは思い上がりではないのか。
「悪いが、断る」
「えっ」
案の定、断られることなんてまったく予想していなかったらしく。
俺が拒絶すると、雨野リリカはきょとんとしていた。
俺は雨野リリカのことなんて、当時はまったく知らなかった。
何なら、あの時はまだ、雨野リリカというフルネームさえ覚えていなかった。
ただのクラスメイトA、という扱いだった。
そんな人に、首から上が好きだから付き合ってくれと頼まれても、引き受けることは出来なかった。
それに、例え雨野リリカのことをよく知っていたとしても、このような話は断っただろう。
「他を当たってくれ」
頭が良くて顔が良い男が好きなら、俺である必要はない。
他にいくらでも、変わりはいるはずだ。
俺には分からない。
誰かを好きになるとか、誰かに好かれるとか、そういうことは分からない。
多分一生分からないと思う。
「話はそれだけか?なら、もう失礼する」
「え、ちょ、まっ…」
雨野リリカの制止を振り切って、俺はくるりと踵を返して立ち去った。
…雨野リリカからの嫌がらせが始まったのは、この時からである。


