神に選ばれなかった者達 前編

この時僕は、どうするのが正解だったのだろう。

のぞみが何日も連続で悪夢を見ていること。これは疑っていなかった。
 
のぞみがそうだと言うのだから、そうなんだろう。

病院にでも行けば良かったのだろうが、この時の僕達には、病院にかかるお金なんてなかった。

それに、基本的に大人というものを信用していなかったので、病院だろうと何だろうと、大人に相談するなんて以ての外。

他に頼れる人もなく、自分達で問題を解決しなければならない。

だから、僕は祈った。

信じてもいない神様に。

僕はこれまで、一度も神に願いを叶えてもらったことなんてなかった。

何度も祈った。何度も願った。

僕を助けてくれ、のぞみを助けてくれ、この地獄から救い出してくれと。

毎日のように、願った。

だけど神様は、僕の願いを叶えてはくれなかった。

いつだって現実は残酷で、冷酷で、残忍だった。

神に祈っても無駄なのだ。

自分を守りたいなら、自分の大切な人を守りたいなら、自分の力で何とかするしかないのだ。

あの日、大切だった人の骸を前に。

血の滴る凶器を眺めながら、僕はそのことを知った。

だから、神に祈るのは、本当に久し振りだった。

神様はずっと、僕に冷酷な運命を突きつけ続けた。

それはまるで、僕をいじめて嘲笑っているかのようだった。

そんな残酷な神様に、僕は祈る。

どうか、のぞみと同じ悪夢を見させてくれと。

「…神様。天国にいる天使様」

僕は両手を合わせて祈った。

僕はこれまで、一度としてあなたに報いてもらったことはなかった。

いつだってあなたは、僕とのぞみを苦しめるだけで、一度だって僕達を救ってくれなかった。

それでももし、あなたが僕の為に、生涯に一度だけでも微笑んでくれるのなら。

例え気まぐれでも、僕の願いを聞いてくれるのなら。

この先、僕の人生に何一つ幸福がなくても良いから。

「どうか、僕をのぞみと同じところに。僕を選んでください。僕も連れて行ってください」

その先にどんな苦しみが待っていても構わない。

のぞみを守れるなら、この身がどうなっても構わない。

だから、どうかお願いします。

…それでも、この期に及んでも、どうしても僕の願いを聞いてくれないなら。

それでも、あなたがのぞみだけを苦しめると言うのなら。

僕はこの世の、すべてを呪ってやる。








…そして、その日の夜。