神に選ばれなかった者達 前編

そうか…。そんな怖い夢を見たのか。

それも、二日も続けて…。

昨日、気づいてあげるべきだったね。

「…大丈夫だよ、のぞみ」

僕は、そっとのぞみの手を取った。

「辛かったね。でも、それはただの夢だよ。現実じゃない」

どれだけ夢の中で怖い思いをしても、それはあくまで夢。

のぞみの現実は、今ここに。目の前にある。

訳の分からない人面犬は、何処にもいない。

「きっと環境が変わったせいで、心が疲れてるんだよ」

嫌な夢を見たのは、きっとそれが原因だ。

「しっかりご飯食べてゆっくり休んだら、そんな夢も見なくなるよ」

「ほんと…?」

「ほんとだよ」

この時の僕は、のぞみが生贄に選ばれたことも分かっていなかった。

だから、そんな見当違いなアドバイスをしてしまったのだ。

「そうだ。今日は一緒の部屋で寝ようか。のぞみが怖い夢を見ないように」

「うん…!」

優しく励まして、ようやくのぞみは笑顔を見せてくれた。

…良かった。

…よし、今日は奮発して、ツナ缶カレーを作ってあげよう。

美味しいものをたくさん食べて、ゆっくり休めば、きっと悪夢も見なくなるはずだ。