神に選ばれなかった者達 前編

のぞみのことは気がかりだったが、僕としても、あまり気にかけてやる余裕がなかった。

あの頃の僕は、今と違って、占い師はやっていなかった。

その代わり、別の仕事をしていた。

生き残る為なら、僕は何でもやった。

一日中、街中を歩き回って、空き缶やペットボトルを拾い、それをリサイクル業者に売って小銭を得たり。

ゴミ捨て場に捨てられている古着や雑誌を勝手に拾って、それも売りに出したり。

街中の自動販売機を回って、お釣りの返却口を漁って、小銭が残っていないか探し。

そして地面に顔を擦りつけて、自販機の下を覗いたりした。

完全に乞食の振る舞いだね。

実際乞食なんだから、別に恥ずかしくないけど。

それに、他のスラム街仲間も、似たりよったりのことをしていたから。

幼い頃から、それが当たり前の感覚だった。

街角に立って、物乞いすることもよくあった。

何なら、盗みだって何度もやった。

人が持ってるものを持ってないんだから、持ってる人に恵みを乞う、あるいは持ってる人から奪い取るのは、ごく自然なことだろう。

しかしゴミ拾いや物乞いは、スラム街の孤児達との競争が激しく、あまり実入りが良くなかった。

そこで、収入を得る為に新たな活路を見出さなければならなかった。

僕にはのぞみがいる。一人ならカツカツでも何とか生きていけるけど、僕はのぞみに、真っ当な生活をさせてあげたいのだ。

美味しいものを食べさせて、綺麗な服を着させて、ちゃんと学校に通わせてあげたかった。

スラム街から脱出するには、教育が必要なのだ。

だからその為に僕は、自分の手を汚してでもお金を稼いだ。

非常に危ない仕事である。

裏社会の組織の使いっ走りとして、怪しげな荷物を運んだ。

所謂運び屋である。

荷物の中身が何なのかは知らない。中は見ないというのが、仕事を請け負った時の契約だった。

ずっしりと重いボストンバッグの時もあれば、やけに軽いリュックサックだったこともある。

多分、武器や、偽札や、薬や大麻の類だったんだと思うけど。

確かに危険を伴う仕事だが、実入りは非常に良い。

一回やるだけで、こんな僕でも、かなりの額をもらえるのである。

のぞみの為なら、僕はどんなことでもする。

その他、非合法組織から頼まれて、違法な薬の売り子をやったこともある。

学もなく、後ろ盾もない僕には、このような薄汚い仕事しか出来ない。

それでも良い。僕の手がいくら汚れても、のぞみが毎日、元気に生きていられるなら、それで。