神に選ばれなかった者達 前編

…と、いう我が家のお風呂事情はさておき。

お兄ちゃんがお風呂に入っている間、私は熱心に本を読んでいた。

あまりに集中して、私は後ろにお風呂上がりのお兄ちゃんが立っていることさえ気づかなかった。

「…のぞみ?」

「…」

「おーい、のぞみ…大丈夫?」

「…」

「…物凄く集中してるな…。そっとしておいてあげるべきなんだろうけど…」

「…」

するとお兄ちゃんは、私の耳元にそっと近づき。

「…わっ!」

「ひゃっ!?」

突然耳元で大声を出されて、私はびくーっ!として本を取り落とした。

「な、な、何っ…!?」

「あ、いや…。ごめん、声かけても反応がなかったから…つい…」

「そ、そう…」

ごめんなさいね、気づかなくて。

でもびっくりするから、突然驚かせるのはやめてよ。

「暗いところで本を読んでると、目が悪くなっちゃうよ。電気をつけよう」

と言って、お兄ちゃんは室内の電灯をパッとつけた。

我が家では電気代節約の為に、日が落ちるギリギリまで電気はつけないことにしている。

その電気だって、いつも来てるとは限らないしね。

気まぐれで、電気がついたり消えたりするユニークなアパートだから。

お風呂上がりのお兄ちゃんは、肩に古ぼけたタオルをかけたまま、私の手元を覗き込んだ。

「相変わらず、のぞみは読書家だね」

「そ、そういう訳じゃ…」

「今日はどんな本を読んでるの?もし面白いなら、後でお兄ちゃんも、のぞみに読んで聞かせて欲しいな」

…そんな楽しい本だったら良かったんだけど。

今回は、そうじゃないの。

「あのね、これ…。ゾンビの倒し方、っていう本なの」

「…!」

…お兄ちゃんも気付いたみたいだね。

「夢の中で…何かヒントになるかと思って…」

「そうか…。…そうだね。そっちのことも考えないとね」

落とし穴作戦、結局失敗しちゃったもんね。

新しい作戦を考える為にも、この本は有益だ。

「そんな本、何処で見つけたの?」

「学校の図書室。秋本君が探してくれて…」

「…秋本?」

あ、やばっ。

お兄ちゃんの目が、ギロッと光った。

「…誰?その馬の骨」

馬の骨って。

「た…ただの図書委員だよ。図書委員に協力してもらって、探してもらっただけ」

「…本当に?その男とは何もないよね?」

「…ないよ…」

ただの同級生ってだけ。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の周囲に男が近寄ろうものなら、すぐこれなんだから。