神に選ばれなかった者達 前編

「ふむふむ…。…成程…」

いつの間にか、私は熱中してその本を読んでいた。

凄く馬鹿馬鹿しいタイトルからは想像も出来ない、詳しく、専門的で、そして分かりやすい解説書だ。

これは、なかなか良い本だぞ。

ちなみに、やけに部屋の中が静かだけど。

今お兄ちゃんは、お風呂中である。

へぇ。お風呂付きのアパートなんて、贅沢な家に住んでるなーって思ったでしょ。

違うよ。

勿論、我が家のアパートには、お風呂なんてついてない。

申し訳程度のシャワールームさえない。

完全な、風呂なし物件である。

キッチンと水道が共同でないのが唯一の救い。

じゃあ、どうやってお風呂に入ってるのかって?
 
タライだよ。金ダライ。

やかんでお湯を沸かして、金ダライにお湯を注ぎ。

手桶と手ぬぐいを使って、それをお風呂の代わりにしている。

近くに銭湯もないしね。

それに、銭湯だと少なからず、お金がかかっちゃうから。

金ダライと手桶と手ぬぐいでも、慣れると結構快適だよ。

唯一惜しむらくは、金ダライには当然湯沸かし機能がないので、お湯を入れると段々冷めていくところである。

夏はともかく、冬場は結構キツい。

熱いお湯を入れ過ぎると、火傷しちゃうし。

かと言ってぬるいお湯を入れると、お風呂が終わる頃には、お湯が冷たくなってしまう。

下手すると、風邪を引いてしまいかねない。

だからお兄ちゃんはいつも、私に一番風呂を譲ってくれる。

たまにはお兄ちゃんも一番風呂に入れば良いのに、未だに聞いてもらえない。

我が家には部屋が二つしかないので、プライバシー保護の為、お風呂中は部屋の移動はしない。ようにしている。

親しき仲にも礼儀あり、ってね。