神に選ばれなかった者達 前編

意地汚い私は、幼い頃、お兄ちゃんの苦労なんてまったく分かっていなかった。

ほんの僅かな食べ物を持ってくるだけでも、どれほど大変な思いをしたことか。

それだけ大変な苦労をして得た食べ物を、お兄ちゃんは惜しげもなく私に与えてくれた。

自分では食べず、いつも私に。

私が「お腹が空いた」と泣くと、お兄ちゃんはふらっと、数時間いなくなって。

そして帰ってきた時は、必ず、その手に何かしらの食べ物を持ってきてくれた。

その食べ物を、私に笑顔で差し出すのだ。

戻ってきたお兄ちゃんは、大抵、身体の何処かを怪我していた。

頭から血を流していたことだってある。

それでも、お兄ちゃんはいつだって私の為に頑張ってくれた。

厄介なお荷物である私を守り続け、庇い続け。

自分がどれほど痛い思いをしても、苦しい思いをしても…ひもじい思いをしても。

私という存在を、ここまで生かしてくれた。

…私と一緒に、生贄として生きることを選んでくれた。

だから、私が今生きていられるのは、お兄ちゃんのお陰なのだ。

ある程度大きくなってから、私は初めてそのことを知った。

そしてそれ以来、食べ物でも何でも、手に入れたものは全部、お兄ちゃんと分けることにしている。

何でも分け合う。食べ物も、痛みも、苦しみも全部。

私達はそうやって生きてきたし、これからもそうやって生きていくのだ。






「一人じゃ食べないからね。お兄ちゃんも一緒に食べるの」

「はいはい、分かったよ…。のぞみは頑固な子だなぁ…」

頑固で結構。

それに、お兄ちゃんも相当頑固な方だと思うけど?

「じゃ、帰って一緒に食べようか」

「うん、そうしよう」

一緒に、お兄ちゃんの商売道具を鞄の中にしまい込んで、片付けをし。

一緒に、二人で家路を急いだ。