神に選ばれなかった者達 前編

今でこそ私は、空腹を我慢出来るようになった。

好きな時に、好きなように空腹を満たせる状況じゃなかったから。

例え自分がお腹が空いていても、食べ物が乏しい時は、お兄ちゃんと一緒に分ける。

どんなものでも。どんな時でも、だ。

だけど、幼い頃の私は、そうじゃなかった。

このことで私は、今でもお兄ちゃんに対して罪悪感を覚えている。

本当に申し訳ないことをしてしまったって、今でも悔いている。

幼い頃、物心つく前の私は、とても意地汚い子供だった。

でも、それも仕方のないことなのかもしれない。

幼い頃の私は、いつもお腹を空かせていた記憶しかない。

食べ物が充分にあった試しがなく、雛鳥のように、親鳥が餌を運んできてくれるのを待っていた。

私とお兄ちゃんのお母さんは、私達に充分な食べ物を持ってきてくれなかった。

これが、私達兄妹の空腹の原因だった。

私達には、面倒を見てくれる親がいなかった。

だから代わりに、お兄ちゃんが私の面倒を見てくれた。

私にとってお兄ちゃんだけが、唯一の家族だった。

お兄ちゃんは私の兄であり、親であり、保護者だった。

幼い頃から私は、お兄ちゃんと二人きりで生きてきた。

幼い私を抱えたお兄ちゃんが、どれほど大変だったか。

想像するだけで、胸が苦しくなる。

親も、頼れる人もいない。スラム街では、見返りなしに人を助けるお人好しなんていない。

自分で生きていかなければならない。自分で生活の糧を得て、自分の足で歩き、自分の手で困難を打ち払わなければならない。

時に狡猾に、時に残忍に、時に…自らの手を汚してでも。

それが出来ない者から、順番に死んでいく。

当時まだ幼い私は、お兄ちゃんにとって、厄介なお荷物だったに違いない。

お兄ちゃんは私を養う為に、どれほど危険な綱渡りを繰り返してきたことか。

お兄ちゃん一人なら、きっと、もっと楽に生きられたはずだ。

自分一人の為だけなら、それほど危険を犯す必要はなかった。

何処にでも逃げられた。自由に、何でも出来たはず。

だけど私が重荷だった。私がいるせいで、お兄ちゃんは自由になれなかった。

私という足枷のせいで、お兄ちゃんはまだ子供の頃から、苦労しっぱなしだった。

邪魔な私のことなんて、さっさと捨ててしまえば楽だったものを。

捨てるなんて簡単なことだ。

スラム街では、子供を捨てる、親を捨てる、兄弟を捨てるなんてことは、ごくありふれた光景だった。

犬猫を捨てるよりも、遥かに気楽なことだった。

その辺のゴミ捨て場に私を置いて、そのまま戻らなければ良い。

数日経てば、私はその場でカラスの餌になっていただろう。

それでおしまいだ。それで、お兄ちゃんは自由の身になれる。

とても簡単なこと。赤子の手を捻るかのごとく。

それなのにお兄ちゃんは、一度として、私を置き去りにはしなかった。

厄介なお荷物以外の何物でもない私を、未だに守り続けてくれている。