神に選ばれなかった者達 前編

だから、私は今日もお兄ちゃんと一緒に、今日の「戦果」を喜ぶ。

「良かったね、お兄ちゃん。今日は大儲けだ」

「本当だよ。最近は、以前より儲けが多くなって有り難い」

へぇ?

「お兄ちゃんの占いが当たるって、評判になってきたのかな?」

「まさか。お兄ちゃんの占いの技術は、昔も今も皆無だよ」

…まぁ、そうだよね。

お兄ちゃんの商売道具の水晶玉だって。

ピカピカに磨いてはいるけど、それ、実はただのガラス玉だし。

当然、何かが映るはずもなく。

いつだってお兄ちゃんは、何も見えない水晶玉を真剣な顔で凝視しながら、ありもしない作り話をしているだけ。

それでも、お兄ちゃんの真に迫った演技のお陰か、騙される人が多数。

「単純に、商売仇がいなくなったのが要因だろうね」

「え、どういうこと?」

商売仇って?

「ちょっと前まで、当たるって評判の占い師が近くにいたんだ。女性だったんだけど…彼女はお兄ちゃんみたいな詐欺師じゃなくて、本当に『見える』人だったらしい」

「本当?そういう演技をしてたんじゃなくて?」

「さぁ…。あくまで噂だし、お兄ちゃんは会ったことないから、知らないけど…」

この路地裏で商売をしている人の中で、モグリじゃない者がいるのだろうか。

「その人、今は足を洗ったらしい」

「ふーん…。水商売でも始めたのかな?」

「噂によると、マフィアの準幹部と結婚したとか何とか…」

水商売どころか、結婚詐欺なんじゃないの?それ。

まぁ、他人のことなんてどうでも良いよね。

「まぁ、そんなことは良いや。今日は儲かったし、今晩の夕飯は奮発して、のぞみの好きなちくわカレーでも作ろうか?」

わぁい。嬉しい。

でも、今日はお兄ちゃんがご飯を作る必要はないんだよ。

「あのね、お兄ちゃん。今日はね…」

私は、昼間、友達に購買部でパンを奢ってもらったことを話した。

「本当に?それは良かったね、のぞみ」

「うん」

宿題を見せるだけで、こんな素敵な役得に預かれるなんて。

やっぱり、宿題は普段からちゃんとやっておくべきだね。

しかし。

「それじゃ、そのパンはのぞみが食べると良いよ。お兄ちゃんは昨日の残り物を…」

「ちょっと。それじゃあ駄目だよ」

「え?」

え?じゃないよ。

何の為に、欲張って三つも奢ってもらったと思ってるの。

一人で頬張る為じゃないよ。

「お兄ちゃんも一緒に食べよう」

「お兄ちゃんは別に良いよ。のぞみのものなんだから、のぞみが一人で…」

「だめ。お兄ちゃんも一緒に食べるんじゃなきゃ、私も食べないからね」

「…強引だなぁ…」

好きに言って頂戴。

こればっかりは、絶対に譲らないからね。

食べ物は何でも、分け合って一緒に食べる。

物心がついた頃から、私はそう決めているのだ。