神に選ばれなかった者達 前編

長い長い帰り道。

今日は「お土産」があるお陰で、いつもより足取りが軽かった。

「お兄ちゃん、ただい…」

ま、と言って、アパートのドアを開けようとしたのだが。

ガチッ、と音がして、ドアが開かなかった。

…あれ。鍵がかかってる。

それとも、ドアの建付けが悪いせいで開かなくなっちゃったか。

私は鞄の中から古ぼけた鍵を取り出して、鍵穴に突っ込んで開けた。

そうするとちゃんと開いたので、どうやら鍵がかかってただけだったらしい。良かった。

「あれ…。お兄ちゃん、まだ帰ってなかったんだ…」

私が帰る頃には自分も帰ってる、って言ってたのにな。

折角、今日のお土産を見せてあげようと思ったのに…。

すぐに帰ってくると思うから、このまま待っていても良いけど。

…よし。たまには、私の方から迎えに行こう。

一刻も早く、お土産のことを教えてあげたいしね。

お兄ちゃんが何処で仕事をしているのか、大体想像はつく。

私は学生鞄を手に、お兄ちゃんを迎えに行くことにした。

しばらく歩いて、お兄ちゃんがよくいる、いつもの路地裏を探しに行くと…。

「…おっ」

…いたいた。発見。

声をかけようかと思ったけど、お兄ちゃんの前にお客さんが座っているのを見て、慌てて口を噤んだ。

廃屋の影に隠れて、お兄ちゃんとお客さんの会話を盗み聞き、もとい。

お兄ちゃんのお仕事の様子を見守ることにした。

「それで…どうですか?先生…」

「うーん…。あまり良くないですね」

「そ、そんな…!」

お兄ちゃんは神妙な顔で答え、お客さんは青ざめていた。

…あのお客さん…。何度か見たことがある、ような。

もしかして、お兄ちゃんの「常連客」だろうか?

「ほ、本当に駄目なんですか?」

「えぇ…。水晶玉の導きですから」

お兄ちゃんは力なく首を振った。

そんなお兄ちゃんの前には、透明な水晶玉が置いてある。

あれは、お兄ちゃんの大事な商売道具の一つである。

「あなたの運命は、遠からず尽きます。天の星々から見離され、神からも見離され…。不幸のどん底に叩き落される未来が見えます」

「あぁ…なんてこと…!主よ、お助けください…!」

この世の終わりのように嘆くお客さん。

すると。

お兄ちゃんはすかさず、テーブルの下から、別の「商売道具」を取り出した。

「しかし、助かる方法はあります」

「えっ、ほ、本当ですか?私、何でもします!」

「これを持って、朝晩欠かさず祈ることです」

お兄ちゃんが取り出した「商売道具」とは、ペンダントだった。

綺麗な白い石の付いた、金色のチェーンのペンダント。

「これは、私が神の導きのもと、特別な祈りを捧げて清めた、特別な石です」

「…!」

お客さんは、そのペンダントを神々しい眼差しで見つめた。