恋をしたのは姉の夫だった人

 二人が前進した時、目の前のカップルの彼が彼女の頬にキスをした。

なんてこと……!

衝撃はそれだけでなく、
さらに彼女が彼の唇にキスをする。

 ここは公衆の面前。
熱烈過ぎでないの!

 時々カップルのイチャイチャを見ることはあるが、そこまで気には留めない。
だが、今隣にいる瑞樹を意識すると、恥ずかしくなった。

「お、お義兄さん、メニューもらえないか確認してきますね」

「……え?」

 この場にいられない。
そう思い、列から抜け出してしまった。

 きっと瑞樹は変に思っただろうけれど、仕方がない。

 店内に足を踏み入れる。
すると、「優」と横から声を掛けられた。
朝陽だった。
彼は店内の椅子に座り、順番待ちをしていた。

「朝陽……」

 朝陽は立ち上がると、「偶然だな」と嬉しそうに言う。

「うん」

 誰と来たのかと彼の席の横を見ると、懐かしい人物に目を丸くした。

「おばさん……!」

「優ちゃん?」

 朝陽の母親とは、彼と別れた以来だ。
記憶の中の朝陽の母親より、髪は白髪混じりになり、顔のシワも増えていた。

 それなりに長い付き合いをしていた二人なので、彼の部屋に遊びに行くこともあった。
その際に彼の母親とはよくお喋りをしたものだ。

「はい、お久しぶりです」

「久しぶりね。優ちゃんすごく綺麗になって……」

 そんなことないと笑うと、朝陽が驚くことを口にする。

「だろう?だから今、改めてアプローチしてるんだ」