恋をしたのは姉の夫だった人

「やめてください、照れちゃいます……」

 瞬時に顔を逸らすが意味がなかった。

「照れてる優ちゃんも可愛いよ」

 そう続けるので、「もう……本当にダメですよ」と、熱くなった顔を手でパタパタと仰ぐ。

「じゃあ今はやめておくよ」

「……今って」

「二人きりになった時は覚えていて」

 瑞樹は口の端を上げてイタズラ顔で言う。
何も言えなくなった優は、小さく笑うしかできなかった。


 水族館を出た後は、近くの洋食屋に入る。
店はお昼時で混んでいてすでに待ちができ、二人の前に七組ほど並んでいた。
待つことは得意な優だが、相手が瑞樹。
少し緊張してしまう。

 しかも前後は仲のよい若いカップル。
イチャイチャな空気に挟まれ、よりドキドキする。

「寒くない?平気?」

「大丈夫ですよ。お義兄さんは大丈夫ですか?」

「平気だよ、ありがとう」

 相変わらずの好みの笑顔に胸がときめく。
このままではいけないと、「心から、何か連絡来ました?」と、話題を心のことへ持っていく。

「ううん、来てないよ。お義母さんたちと楽しんでるんじゃないかな」

「心たちもご飯食べてる頃ですかね」

「そうかもね。あ、前、進んだよ」

 瑞樹が優の肩を抱く。
前進させようとする何気ない仕草だが、それだけで胸の鼓動は早くなる。