今日は我慢しない。


 原田くんはそのまま私を連れて廊下を抜けて階段を上がり、二階の空き教室に入った。

 そして私に向き直る。

 原田くんは拳をぐっと握り、姿勢もいつもよりピンと伸びて力が入っている。

 表情もいつもの冗談を言うときのそれとは違っていて、原田くんの真剣さが嫌でも伝わってきた。


「えっと……三条さん、花火行く人決まってる?」


 その質問の意味をなんとなく理解してしまった私は一瞬躊躇してから、それでも正直に「決まってないよ」と伝える。


「そっか……」


 原田くんは一度うつむいてから、意を決したように顔を上げる。


「三条さん! 俺と、花火に行ってください!!」


 そう力いっぱい言って、頭をバッと勢いよく下げて私に右手を差し出した。


 その手はよく見ると小刻みに震えていて、原田君の緊張が伝わってくる。

 ――原田くんのことは嫌いじゃない。

 むしろクラスの雰囲気を明るくしてくれる気づかい屋のいい人だと思っている。

 でも……私は原田くんとそういう関係にはなりたいと思えない。

 花火大会なんて行ったら気を持たせちゃうだけだよね。

 ここはちゃんと断らないと。


「原田くん、ごめ……」

「断らないで!」

「え……?」