今日は我慢しない。

 佐柳はパッと私の手を離して背を向ける。


「さっきもう捕まりそうになってたけど、陸部がこんな早く退場したら立場なくない?」


 佐柳にしてはトゲのある言い方に、胸にもやっとしたものが広がる。

 なに? 喧嘩売ってる?

 返答しないでいると、佐柳は40kgのダンベルを拾いながら振り向きざまに冷たい流し目を寄越した。



「もうちょっと頑張れば?」



 ピキッと私の中のなにかが凍った。

 声も出せず固まる私に構わず、佐柳はスタスタと去っていく。


 は?

 
 もうちょっと頑張ればって、言った?



「……」



 キュンキュンしていた胸がイガイガとした怒りの感情にすげ変わる。


 ふーん。

 そんなふうに思ってたんだ?

 私の中に燻っていた闘争心にボ!と火がついた。


 やってやろうじゃん……!


 溢れ出す闘争心を抑えきれず拳をパキッと鳴らした。