今日は我慢しない。


 佐柳の手がポスターを滑る音と、遠くの方にある野球部の掛け声が、この空間の静寂をより際立たせてくる。

 い、息ができない。

 佐柳の空気に、どうしてもドキドキしてしまう。

 さっき普通に接しようって心に決めたばかりなのに。

 普通にしよう、普通に……普通に?

 普通って、どんなだっけ。


「――……あのさ」


 先に口火を切ったのは佐柳だった。


「あ、は、はい」


 動揺がバレないように力んだ結果、敬語になる私。


「こないだ、体育館で話したことについてなんだけど」


 ……!


「う、うん……?」

「……あの時のこと、謝りたくて」


 ん? 謝る?

 首を傾げるわたしに、佐柳は言いづらそうに口元に手をやる。


「あの時俺、テンパってて、三条からしたらそっけなく見えたかもって後になって気付いて……三条に発情されて引いたとかじゃなくて、どっちかというと自分に引いたというか……あー、なんて言ったらいいかな」