今日は我慢しない。

 呆然とする私を残し、男子たちは笑いながら廊下へ逃げて行った。
 
 教室のみんなは私を憐れみの目で見るけど、話しかけようとはしてこない。

 誰も助けてくれない。

 誰も味方してくれない。

 転校したてだった私には、おばあちゃんのお弁当だけが唯一の味方だった。

 悔しさやら恥ずかしさやらで涙が出そうになる。

 すると耳の奥の方から、お母さんが死ぬ間際に言ったセリフが聞こえてくる。

 
 『負けちゃ駄目よ、那由。 あなたはお母さんみたいになっちゃだめ。 強く生きてね』


 私は歯をギッと食いしばって耐えて、窓から花壇に出た。

 私を監視するクラスメイト達の視線なんか気にしないで、泥にまみれたごはんを拾い、できる限り土を払ってお弁当箱に戻すと、そのお弁当を自分の席に持っていって手を合わせる。


「いただきます」