今日は我慢しない。


 『俺を頼って』『俺に助けさせて』


 ……本当に私を助けるためだけに?

 あんなになるまで、我慢してくれたってこと?


「……っ」


 胸が、苦しくなった。


 αはみんな自分勝手で心の中ではΩのことなんか見下してるんだと思ってた。

 お母さんと私を簡単に捨てた父親みたいに。

 でも、違うんだ。

 αだけど佐柳は、違うんだ。

 この世界に、Ωの私をこんな一生懸命助けてくれる人がいるんだって、感激で胸が熱くなる。


 いつの間にか佐柳が脱ぎ捨てていたカーディガンがそこに落ちていて、それを拾う。

 佐柳の匂いがする。

 今日の今日まで嫌いだったはずのその匂いにひどく安心して、また胸がきゅぅ、と苦しくなった。