そして、段々と冷静になっていく。
は、恥ずかしい。
気まずい……っ
さっきと違う意味で熱くなってくる。
どうしよう、なんて言おう。
そう思ってちら、と佐柳の方を見ると、
「!?」
佐柳がガブッ!と勢いよく自分の腕を噛んだ。
「佐柳!?」
「フー……ッ、フー……ッ」
佐柳は興奮した獣みたいな息遣いで、首筋に汗が伝っているのが見える。
噛んだ腕からは血が滲み出している。
「えっ、え……? 佐柳、血が、」
「動かないで」
佐柳の冷たい声に、ビクッと体がこわばる。
「さ……佐柳……?」
相変わらず肩で息する佐柳はゆらりと後ずさると、苦しそうに言った。
「……今、近寄んないで……噛みそう」
……!
αは性的興奮が高まると、相手に噛みつきたい衝動に駆られることがあるって、教科書で読んだ。
「っあー、クッソ」
佐柳は頭から何かを追い出そうとするように頭を振るとドアに手をついた。
「保健室行ってくるから鍵閉めて待ってて。 帰り、送る」
「あ、う、うん」
そのまま佐柳が生徒会室を出てドアを閉めると、忙しない佐柳の足音は徐々に遠くなって、消えた。
途端に静かになる生徒会室。
私は佐柳に言われた通り、鍵を閉める。



