今日は我慢しない。

「最初の発情は本格的なヒートじゃなきゃ少し発散すれば落ち着くって聞いたことがある。 三条が俺の手を借りたくないのはわかってるけど、こんな状態で外に出すなんて……無理だ。 だからなんとかして落ち着かせたかっただけ。 でも、違うよな、こんなの。 ごめん。 ほんとごめん」


 耳元に聞こえる佐柳の声は震えてて、何かを怖がるみたいに泣きそうで

 ぎゅ、と私を抱きしめる力強い腕に、佐柳の優しさを感じた。


「頼む、三条……俺を頼って。 今日だけでいい。 俺に助けさせて」


 いっそすがるような佐柳に、なぜか熱があがった。

 すると、それまで無意識に強張っていた体からフッと力が抜ける。

 それに気付いたのか、佐柳は恐る恐る私の頬に触れた。



「目とじて、三条」



 ――αの言うことなんか聞かない

 これまでの私ならきっとそう思って、頑なに拒否した。

 でも、私は素直に目を閉じていた。

 それは泣きそうな佐柳に、心を許したくなったから。