今日は我慢しない。

 サッカー部の男子たちはちょうど扉の前にいて、突如現れた私に目を丸くして固まっている。


「小学校の授業で習ったよね。 第二の性についてはデリケートなものだから、むやみに聞いたり探ったりしてはいけないって」

「あ……いや……その、」

「これも知ってる?この国では絶滅危惧人種のΩをいたずらにいたぶった場合、未成年なら少年厚生施設で2年間服役したあと履歴書に必ずその経歴を記すこと、前科者として著名大学入学不利はもちろん就職、結婚、すべてのステージでその前科が付いて回って『国が全力で保護しようとしてる大事なΩに手を出した最低野郎』のレッテルを背負って生きていかなきゃいけないんだよ~」


 ノンブレスで言う私に、男子たちは固まったまま顔を青くさせている。

 私はニコニコしたまま続ける。


「そんなΩを探し出して手を出すの?フフ、すっごい勇気だね!」

「「「すっ、すいませんでした!!」」」


 サッカー部の男子たちは90度の綺麗なお辞儀を勢いよくすると、走って逃げていった。

 ……はぁ。ちょっと喋りすぎたかも。