『ねぇ、那由』 夕暮れの病室。 窓の外、遠く向こうを見つめるお母さんは、穏やかな顔で。 『お母さんね、なにも後悔してないのよ』 『あの人を愛したことも、嘘をついたことも』 『だけどね』 『お母さんがもっと強かったら違う結果になってたかもって思うことはあるのよ』 思えばそれは、泣きそうなのに暖かい声だった。 『だから那由。あなたは強くなって』 『愛する人のそばにいられるように』 「あ……」 〝強くなって〟というお母さんの言葉の意味を 私は今、ようやく理解した。