今日は我慢しない。


「ちょっとスーパー寄ってもいい?」

「ん」


 佐柳は私が指さしたスーパーの方へ迷いなく足を向ける。

 私が自動ドアを抜けて買い物かごを持つと、佐柳がそれを持とうと手を差し伸べる。


「佐柳はここで待っててくれる?」

「ん?手伝うよ」

「ううん、大丈夫。すぐ終わるから待ってて」


 納豆とかお菓子買うの見られるの、なんか恥ずかしい。


「わかった」


 そんな思いを知ってか知らずか、佐柳はおとなしく店の外のベンチに腰掛けた。

 その素直さが犬みたいで。

 妙に可愛く思えた。

 あまり待たせたくなくて、いつもは熟考する野菜コーナーや精肉コーナーも、必要最低限のものだけカゴに入れてどんどん歩く。

 今夜は鶏ひき肉が安いから、鶏つくねにしようかな……。


 どのパックにしようか悩んでいると、「あの」と声をかけられた。

 顔を上げると、真っ黒なサングラスにグレーのマスク、ハットをかぶったスーツ姿の男の人が隣に立っていた。