今日は我慢しない。

「……」


 すると佐柳の指が、肩から落ちた私の髪をそっと掬った。

 不意打ちのことに思わずドキッとする。


「三条って髪いつもおろしてるよな」

「あ……うん」


 佐柳の言う通り、私はなるべく髪をおろして過ごしている。

 それはうなじからあふれるらしいΩのフェロモンを隠すため、αに襲われなようにするちょっとした対策でもある。


「俺、初めて三条を見たときのことすごい覚えてるんだよね」

「え?」


 初めてわたしを見たとき……?


「入学式の日。朝、教室に向かって一人で廊下を歩く三条をみんなが見てた。堂々と胸張って歩く三条の髪が風になびいてて……初めて誰かに対して〝きれい〟って思った」

「え……」

「多分、その時から三条に惹かれてた」


 佐柳は私の髪を口元に持っていってちゅ、と口付けをした。



「今も。ずっと惹かれてる」



 吸い込まれそうな金色の瞳に、息の仕方を忘れた。