今日は我慢しない。

 え……?

 また来るって言った?


 母さんの苛立ったため息と、鍵をガチャンと閉める音がする。


「蓮田さん。今度また彼女が来たらテキトーに追い返してくれる?」

「わかりました」


 カーテンの隙間から窓の外を見ると、入り口から背中を向けて歩いていく三条の姿が見えた。

 その三条が今まさに振り向こうとしていた。


「!」


 咄嗟に窓から離れて身を隠す。


 ドクドクと鼓動が脈を打った。

 まさか三条が来るなんて。

 しかも『また来る』って……


「っ……、」


 ……嬉しい。

 嬉しすぎて涙が出てきた。

 そこまで俺を気にかけてくれてたってこと?

 いや、単純に花火大会の日の文句を言いに来たのかもしれない。

 きっとそうだ。

 俺から誘ったのにドタキャンして、そのまま逃げるように学校も辞めて……三条からしたら不完全燃焼だよな。


 恐る恐るカーテンの隙間から外を覗くと、三条の背中が遠くに小さく見えた。

 相変わらずピンと背筋の伸びたキレイな後ろ姿に、胸がぎゅっと締め付けられた。