これ以上話すのが怖くなった。
佐柳から拒絶の言葉が出てくることも、自分が嫌なことを言ってしまいそうなことも。
「……そっか。わかった。じゃ」
そのまま通話を切ると、無意識にこぼれ落ちた涙がスマホの画面にぽたりと落ちた。
……なによ。
じゃあなんで誘ったのよ。バカ佐柳。
ちょうど電車がホームに滑り込んで、大勢の人がホームに降り立ってくる。
私はあわてて涙を拭いて、急ぎ足で帰り口のホームへと向かう。
佐柳のことだから、きっとなにかよっぽどの事情があるんだろう。
でも、ムカつく。
ムカつくムカつくムカつく。
わたしは、期待してたから。
不安だったけど、期待してた。
すごく楽しみにしてた。
とにかく会いたかった。
……そう思ってたのは、私だけだったんだってことが、本当にムカつく。
さっきまで心地良かったはずのまぶしい青空も赤い浴衣も誰かの楽しそうな笑い声も
すべて不快に変わった。
改めて、私は花火が見たかったんじゃなくて、佐柳と花火を見たかったんだって実感した。
悔しくて悲しくて、でも泣くもんかって歯を食いしばってひたすら歩いた。
佐柳の、バカ。
その翌朝のことだった。
佐柳が転校するらしいと聞いたのは。



