「ねぇ、麗琉くん。麗琉くんは、私が引っ越してきてすぐの頃のこと覚えてる?」
「………。」
無言ってことは覚えてるんだろう。
というか初対面であんな憔悴しきった姿見たら忘れるわけないよね。
私は小さく苦笑いをこぼしてからもう一度麗琉くんをしっかり見つめる。
「今だから全部話すよ。私が1人暮らしをしているのは、交通事故で両親を亡くしたから。身を寄せる親戚もいなくてしょうがなく自分で生きていくしかなかった……。」
あのときは今までもこれからももう二度とありえないってほどの苦しみを味わった。
もうヒカリなんて見えなくて全てが闇のようだった。
「………。」
目を見開いたが、何も言わず黙ったままの麗琉くん。
だから私は気にせず続けた。
「そして……絶望と傷を抱えて引っ越してきて…。憔悴しきったまま麗琉くん家に引っ越しの挨拶に行ったとき。……本当に麗琉くんに救われたんだよ。」
「は……?」
やっぱ、記憶にないのかな……?
「あのとき、麗琉くんは一人暮らしだって言った私に『今ちょーど夜ご飯作ったんだけど、作りすぎたから一緒に食べない?』
って言ってくれた。1人きりだった私を暗闇から引き上げてくれた…!!」
「……っ!」
僅かにハッとする息遣いが聞こえる。



