え?と私は声に出してしましいそうだったが、近藤は驚きもせずに答えた。
「はい」
「やっぱり。ずっと似てるなーと思ってたんですよ。頑張って下さい!レース見てます」
「ありがとうございます」
店主は嬉しそうに笑いながらごゆっくり、と席を離れていった。
「近藤さんって有名人だったんですか?」
「いや、有名ではないよ。俺ね、レーサーなの。ボートレーサー」
「あ、そうだったんですか」
「あ、あんまり驚かないんだね。だいたい、嘘?て言われるから」
「いえ、なんだか納得、て感じです」
私とは違う世界で生きている人だろうと感じていたからだ。
それから連絡が取れない時はレースに行っていたと聞かされて、色々と合点がいった。
やはり私の日常とはかけ離れていて、自分がとても狭い場所に閉じこもっているのだとなんだか情けない気持ちにさえなった。
「これからどうするの?北川の家に行く?」
「いえ、ずっと居座るわけにもいかないし」
「そうだね。根本的な解決にはならないからね」
「何かこんなことで悩んだりするのくだらないなって思うんです。でも」
言葉に詰まったけれど近藤はすぐに言った。
「俺も妹のことがなければ恋愛で悩むとかくだらないって今でも思ってたかもしれない」
「騙される方が悪いなんて変な正論ですよね」
私は見当違いかもしれない返事を笑って言いながらも、黒い靄が消えない。少しでも下を向けば、たちまち憂うつに飲み込まれる。
逢魔時。違う世界へ行けるのならば、彼の居ない所へ行きたい。彼に関わる全ての記憶を消し去りたい。彼の記憶からも消えてなくなりたい。
「はい」
「やっぱり。ずっと似てるなーと思ってたんですよ。頑張って下さい!レース見てます」
「ありがとうございます」
店主は嬉しそうに笑いながらごゆっくり、と席を離れていった。
「近藤さんって有名人だったんですか?」
「いや、有名ではないよ。俺ね、レーサーなの。ボートレーサー」
「あ、そうだったんですか」
「あ、あんまり驚かないんだね。だいたい、嘘?て言われるから」
「いえ、なんだか納得、て感じです」
私とは違う世界で生きている人だろうと感じていたからだ。
それから連絡が取れない時はレースに行っていたと聞かされて、色々と合点がいった。
やはり私の日常とはかけ離れていて、自分がとても狭い場所に閉じこもっているのだとなんだか情けない気持ちにさえなった。
「これからどうするの?北川の家に行く?」
「いえ、ずっと居座るわけにもいかないし」
「そうだね。根本的な解決にはならないからね」
「何かこんなことで悩んだりするのくだらないなって思うんです。でも」
言葉に詰まったけれど近藤はすぐに言った。
「俺も妹のことがなければ恋愛で悩むとかくだらないって今でも思ってたかもしれない」
「騙される方が悪いなんて変な正論ですよね」
私は見当違いかもしれない返事を笑って言いながらも、黒い靄が消えない。少しでも下を向けば、たちまち憂うつに飲み込まれる。
逢魔時。違う世界へ行けるのならば、彼の居ない所へ行きたい。彼に関わる全ての記憶を消し去りたい。彼の記憶からも消えてなくなりたい。
