「空、変な色ですね」
車から降りて空を見上げた。
「逢魔時だね」
いつものワックスの匂いをさせて近藤が言った。
「逢魔?」
「日が暮れる時のことだよ。昔は太陽が隠れて暗くなる時を怖れてて、妖怪が出るとか、この世とあの世の境目とか、良くないことが起きるとか、そんなふうに例えられてたって。迷信、だけどこんな空は本当に気味が悪いね」
「そうですね」
近藤は私の知らないことを沢山教えてくれる。こういう人をいい男、と呼ぶのだろう。
「ん?」
私があまりに凝視したので、近藤は目を見開いてそう言った。
「いえ、近藤さんって何の仕事してるんですか?」
いつも聞きそびれていた質問だ。
「あれ?言ってなかったかな?中で言うよ」
言いながら店のドアを開けた。
いつものようにいらっしゃい、と威勢の良い挨拶が飛んできた。店主が私たちに気付いて目配せをした。
きっと私と近藤を恋人だと思っているのだろう。もしもそうならば、私はこんな怒りの渦を巻くこともなく、穏やかでいられたのだろうか。
席に案内され、おしぼりを渡してきた店主がいらっしゃませ、の後にあのーと言った。
「はい?」
近藤は不思議顔で答えた。
「あのー、近藤賢人さんですよね?」
店主はそう言った。
車から降りて空を見上げた。
「逢魔時だね」
いつものワックスの匂いをさせて近藤が言った。
「逢魔?」
「日が暮れる時のことだよ。昔は太陽が隠れて暗くなる時を怖れてて、妖怪が出るとか、この世とあの世の境目とか、良くないことが起きるとか、そんなふうに例えられてたって。迷信、だけどこんな空は本当に気味が悪いね」
「そうですね」
近藤は私の知らないことを沢山教えてくれる。こういう人をいい男、と呼ぶのだろう。
「ん?」
私があまりに凝視したので、近藤は目を見開いてそう言った。
「いえ、近藤さんって何の仕事してるんですか?」
いつも聞きそびれていた質問だ。
「あれ?言ってなかったかな?中で言うよ」
言いながら店のドアを開けた。
いつものようにいらっしゃい、と威勢の良い挨拶が飛んできた。店主が私たちに気付いて目配せをした。
きっと私と近藤を恋人だと思っているのだろう。もしもそうならば、私はこんな怒りの渦を巻くこともなく、穏やかでいられたのだろうか。
席に案内され、おしぼりを渡してきた店主がいらっしゃませ、の後にあのーと言った。
「はい?」
近藤は不思議顔で答えた。
「あのー、近藤賢人さんですよね?」
店主はそう言った。
