狂気のサクラ

「もう遅いしとりあえず今日は送るけど彼とのことはちゃんと考えた方がいいから」
はい、と答えたけれど充分に考え今があるのだ。
彼が部屋に来ているかもしれないと思い近藤には近くで降ろしてもらった。何か言いたそうにしていたがお礼を言って車を降りた。
部屋の電気がついている。彼が来ている。近藤にここまで送ってもらわなくて正解だ。近藤と一緒の所を見られるとまた何を言われるか分からない。
部屋に入ると玄関に彼の靴があった。私は脱衣室へ入りストッキングを脱いだ。血が固まり、少しずつ剥がしても痛みが広がる。肩は驚くほど汚く朽ちていた。
とても憂うつな気分だ。
リビングに入ると彼はベットに横になっていた。私の顔を見てすぐに視線を逸らした。
「明日も仕事だろ、寝ないのか。電気消せよ」
何もなかったように彼は言った。私がどうやって帰って来たのか疑問にも思わないのだろうか。
言われた通り電気を消しベットへ入る。彼はすぐにキスをしてきてこんな日でも私を抱こうとした。肩も膝も痛いけれど、止めてと言えばまた機嫌が悪くなるだろう。
その時LINEのメッセージ音が鳴った。近藤だろうと思った。
「こんな時間に誰だよ、直正?」
彼はとても不機嫌に言った。
「違うと思う」
「じゃあ見せられるのか?」
私は起き上がりテーブルに置いた携帯を確認した。