10年振りの街


少し冷たい風が海の香りを運んでくる



海沿いにある小さな公園に足を運ぶと、遠い昔の記憶が蘇ってきては俺の心に傷跡を残す



瞳を閉じると、浮かんでは消えていく幼い頃の俺達と珠希…




いつも一緒で毎日、笑って過ごした幸せな日々




もう それは手を伸ばしても届く事はなくて…


もう 願っても叶う事もなくて…



ゆっくり瞳を開けると、朱(あか)色に染め上げられた空と夕日を反射しキラキラと光る穏やかな海が広がっている



はぁ…と吐き出すのは悲哀(ひあい)と後悔を含んだ ため息



重たい足取りで公園を後にした