「家内は、汐月が亡くなった時のショックで心が壊れてしまっているだ。海月を汐月と言ったり…さっきみたいに突然泣き崩れたり。情緒不安定で…持続性複雑死別障害の一種らしい」
おじさんは、もう一口ビールを喉に流し込み汐月を見ると、まるで小さい子をあやすような手つきでポンポンと彼の頭を撫でた
「家内は、あの事件から海月を汐月と重ねて見てしまう事が多くなって、たまに海月と認識すると海月を責めてしまう。ゴメンな、海月」
はぁ…と重たいため息をついたおじさんは手に持っている缶をギュッと握りしめた
「今更、どうって事ねえって。しょうがねーよ、病気なんだから。小さかった頃はショックで受け止めきれなかったけど、俺はあの頃とはもう違う。今はちゃんと理解してる。それに…原因を作ったのは俺だから」
「海月、自分を責めたら駄目だ。あれはお前のせいじゃない」
おじさんの言葉を聞いた汐月は目を伏せると、その瞳からひと粒の雫を落とした



