瞬間、ガシャーンと音がして振り返って見ると、お茶が入っていたであろうコップがトレーと共に床に落ちていた
そこには、汐月を視界に捉えたおばさんが呆然と立っていた
「母さん、怪我は…」
汐月はタオルを手にして床を拭いていると、おばさんが汐月の腕を両手で力強く掴んだ
「汐月ッ!今まで何処に行っていたの?お母さん心配だから何も言わずに外に行っちゃダメだっていつも言ってるでしょ?」
興奮して捲し立てるように話すおばさんの言い方は、まるで小さい子供に言い聞かせてるみたいだった
「何言ってんだよ、母さん。とりあえず、こっちに座って」
ため息をつき、落ち着かせるように宥(なだ)めながらおばさんをソファーに座らせた
「汐月。お母さんが言ってる事、分かるでしょ?」
「分かってる。だけど、俺はもう子供じゃないから、心配する必要ないって」
声を荒立てながら話すおばさんは私が知ってるおばさんとはまるで別人だった



