ガラス越しの彼に声をかけようとした時、視界の端から現れた人物に動きが止まった
その人は汐月を見てニッコリと笑うと、何の躊躇(ためら)いもなく その細くて白い腕を汐月の腕に絡ませた
手に持っている大きな荷物を彼女から受け取ると二人で汐月のアパートの方へ歩いて行った
……誰?
その言葉が頭の中をグルグルと回り続け、無意識に辿り着いた自分の部屋のベッドに身体を投げ出した
汐月が以前、言っていた『好きなヤツ』があの人なんだろうか…
うだうだ考えたって私には分からない…ここは本人に聞くのが手っ取り早い
なんて意気込んで携帯を手に持つけれど、何て切り出せばいいのか分からなくなって汐月の連絡先と睨めっこするだけ



