【短編】眠り姫に口付けを。





「海の側の…教会知ってる?」


海の…側…?


あぁ、和馬の家の側にある。海の側の…



「うん、知ってるけど??」

「そこに四季くん…昔行った事とかある?……かな、」

「無いけどどうして?」


僕がそ言うと、



彼女は少し悲しそうな眼差しで遠くを見つめて。


「…そっか」


と一言だけ呟いた。



「椿、ちゃん?」


「─覚えて…無いよね……」


覚えて無い?

ボソッと呟いた彼女の声は確かに僕の耳に聞こえていた。